これは私が高校生の頃のお話だ❗️ラッタッタはご存知かな?正式名称は、ホンダロードパル。原付バイクだな!70年代後半から80年代前半まで売ってたかな。
CMでソフィアローレンが、キャッチフレーズでラッタッタと発したことから正式名称よりもラッタッタが有名になってしまった。ロードパルは知らなくてもラッタッタはしってるよね!
ラッタッタ〜ラッタッタ〜ラッタッタ♫
あれは高校1年の頃だったかな?お祭りの福引きで親父がラッタッタを当ててしまった。確か1等賞じゃなかったかな?
あるといじりたくなるのが男の性。あると乗りたくなるのも男の性。男は乗りたくなる生き物なのです。悪いこととは知りながら…
僕はまだ免許は持ってなかったので、最初は家の前の狭い道を行ったり来たりしてたんだが、慣れるとつまらなくなる。
探偵物語の松田優作演じる工藤ちゃんになりきって、バッシリーバッバッシリーご機嫌で、だんだん距離が伸びて行く。
それが2日、3日と続き警戒感も罪悪感も薄れたある日、距離はだんだん伸びて探偵物語のオープニングの曲だけでは足りなくなり、エンディングテーマまで歌わなければならなくなった。
しかし、ウチの近所は畑と田んぼばかり農道と言ってもいいような田舎道をラッタッタにまたがり、いい調子で走った。
ウォンチョゲンニュ〜ロンニュロ〜ンロンリーマ〜ンノーバァディキャン♫
そんな時、後ろからバイクの音が…近所の百姓のおっさんかな?抜かれるのが歯医者よりも嫌いなオイラはラッタッタでスピードを上げた!
お〜い!止まれぇ!振り向くと、巡回中のおまわりさんだった。チャラリ〜鼻から牛乳♫(´༎ຶོρ༎ຶོ`) 観念してラッタッタを止めた。
「あんた、高校生ね?免許証は?」
「持っとらんです」
「無免許は犯罪ばい!」
「ばってん、ここは公道じゃなかでしょ?」
「私道でも道交法上無免許では走れんと!」
「ばってん、公道じゃなかなら良かて…」
「決まりは決まりたいね。家にバイク置いて、保護者と交番に来て。今夜7時までよ。住所書いて… 」
足取り重く家に帰った。しばらくすると、両親が仕事から帰って来た。いつもと様子が違う私を見て親父が
「どげんしたとや?なんかあったとか?」
「いや、あー、うん。あー…あんね、今日ラッタッタに乗って警察に捕まったとよねぇ…無免許運転げな。交番に来いて」
「わがぁ〜馬鹿たれがぁ〜!」
親父の平手打ちが❗️ちょうど巨人の星のエンディングで一徹がちゃぶ台ひっくり返して飛雄馬にビンタしているシーン、あの状態ね。
母は泣きながら、「警察に世話になる様な子に育てた覚えはない。ご先祖さんに顔向け出来ん、私と一緒に死んでくれ」とわけわからんことを言いだすし。
親父が母に「お前は黙っとけ」と言い交番に行く準備を始める。
親父が運転する車で交番へ向かった。車中、親父は一言も発しなかった。しかし、妙な気まずさは微塵もなかった。なんか不思議と安心感があった。交番に到着し、中に入るなり親父が大声で「ウチん息子が、こげんこつばしでかしてほんなこて、すんまっしぇん!」おまわりさんに頭を下げた。僕が呆然としていると、「お前も頭ば下げんか!」…と、親父のゴツい手が私の頭を無理やり押し下げた。
「まぁ、座らんですか!」…と、おまわりさん。
親父と僕は恐縮して席に着く。
「息子は、どげんなっとでっしょか?」
「家庭裁判所から呼び出しがあるけん、行ってもらわんといかんですね。あと、学校にも知らせが行くけん、学校からも何かしら知らせがあるでしょ。息子さんは、過去に問題も起こしとらんし、たまたま今回ね…こげんなったばってん、そげん心配せんでよかですよ。まぁ、それなりの罰は受けないかんけど」「そうですか。ばってん、将来に傷がつくことはなかですか?」
「絶対バレんとは言えんけど、基本的はわからんはずです」
「そげんですか。そんならよかです。ご迷惑ばかけました!」
そのあと、書類を書かされ…定かではないが、指紋をとられた様な。僕は聞かれたことに答えただけで、それ以外は喋らなかった。
その間、僕は何を考えていたのか?いつも家では偉そうな親父が、小さくなって、頭を下げている。いつもは、口より手が先に出る親父が、膝に手を置いて神妙に椅子に座ってる。
その姿がショックで、申し訳なくて。無免許運転は確かに悪い。でも、その事より僕のせいで親父に頭を下げさせたことが辛くて。深々と頭を下げて親父は交番を出た。僕はちょこんと頭を下げただけ。
帰りの車中でも、飯が遅なったなぁ…と言っただけで僕を責めることもなかった。いつもなら、馬鹿だのカスだの言われるのに^_^
だいぶ後で聞いた話しだが、自分がバイクを当てたばかりに僕に傷をつけたと親父は悔やんでいたそうだ。
しばらくして、ラッタッタは親父の知り合いに貰われていった。それから僕は家裁送りになった後、停学を受け、それが原因で2年生の時に生徒会長に立候補出来なくなった。僕はクラスメイトを擁立し生徒会長に立候補させ、僕は推薦者として選挙戦を戦った。結局は破れたんだけどね^_^
なぜ立候補したかったのかは、自分でもわからない。謎なのよ…たまに自分がわからなくなる。